成長著しい東南アジアのサッカー
4-0で日本の勝利に終わったFIFAワールドカップ予選AFC 最終グループステージ、日本代表対タイ代表。
日本代表は久保選手など若手の活躍もありタイ代表に4-0と快勝しました。しかしあの試合を観戦した人たちは『もっと得点できたはずだ』『タイ相手にあの程度のパフォーマンスでは』というネガティブな感想が多かったように感じます。
アジア最終予選で1分6敗のタイ代表相手ということでそういった意見が出るのは当然かとは思いますが、試合の内容を見ていてもタイ代表の成長を感じさせる場面は多く見られたと個人的には感じました。
試合を通して果敢に日本相手にプレスをかけ攻めの姿勢を見せたタイ代表。そしてコンサドーレ札幌に移籍が決まっているチャナティップのボールキープ力、機動力は日本代表を十分に苦しめていたように思います。
また今年の2月28日に行われたAFCチャンピオンズリーグ、グループリーグ。チャナティップなど多くのタイ代表選手を擁するタイ王者のムアントンユナイテッドがJリーグ王者の鹿島アントラーズを破った試合は記憶に新しいと思います。
今まで練習試合などでJリーグのクラブがタイのクラブに負けることはあっても、真剣勝負の舞台でJリーグチャンピオンがタイのチームに敗れる。
しかも、数ヶ月前にクラブワールドカップの決勝でレアル・マドリードと熱戦を演じた鹿島アントラーズ相手に挙げた勝利は、タイサッカーにとって大きな衝撃となりました。
サッカーは生活の一部
どこの国でもそうだと思いますが、タイの子供たちにとってサッカー選手は憧れの職業です。77あるタイの県ですが、そのほとんどの場所にプロサッカーチームが存在します。
1部から4部がプロとして行われている国内リーグは、チーム数が多いためサポーターが多いチームから少ないチームまでありますが、どのカテゴリーでもそこの地域の人たちが地元のチームを応援し、下部のカテゴリーでも試合の日には何千人という観客が入るチームも少なくありません。
タイに一度来ればサッカーがどれだけ生活に根付いているかがわかるでしょう。海外・国内の有名チームのユニフォームを来て出掛ける人たち。バーや飲み屋で流れるのはヨーロッパのサッカー中継。
夕方になれば子供大人と関係なく近所の公園やスポーツ施設に集まり、サッカーやセパタクローを楽しむ人たちの姿を見ることができます。
そういった人たちが週末にはスタジアムに集まり地元のチームを応援する。若い人たちはチームのユニフォームを着て試合後に選手と撮った写真をSNSにアップする。
そういった事がタイではどこでも見られる日常になっています。
また、タイ代表選手達の人気は絶大です。
先日行われたワールドカップ予選でもそうでしたが、タイ代表の試合があれば街のいたるところでパブリックビューイングが設置されます。仕事帰りの人も、ユニフォームを着たサポーターも皆で観戦します。その盛り上がりや注目度の高さはワールドカップの時の日本かそれ以上といった感じすらします。
*バイクを道路脇に停めてパブリックビューイングを見上げる人達。
盛り上がるサッカー熱
外国人枠減少の影響や優秀な他国の選手も集まるようになり、日本人選手としては厳しさを増したタイのサッカー事情。ですが、タイのサッカー熱はまだまだ熱さを保ったままだと感じます。
サッカー協会の変革やそれに伴うリーグの変化。様々な変化の中で変わることはあると思います。しかし、その中でタイのサッカーのレベルが上がりつつある事は確かでしょう。
また、近年では日本のJリーグに挑戦する若いタイ人選手達も増え、今まで以上にタイのサッカーに変化が起きていると感じます。日本の可能性のある選手達がタイで活躍し、そしてタイの選手達もJリーグで活躍する。
そういったことはこれからどんどん増え、タイのレベルもさらに上がっていくはずです。その中でまた日本人選手にとっての新しいチャンスも出て来ると思っています。
タイと日本のサッカーがより一層盛り上がり、その中で活躍する日本人選手が一人でも増えるように、これからもサポートしていきたいと思っています。