タイ南部地域のサッカーとは

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アジアのサッカー事情

タイ南部地域

プーケット、クラビ、サムイ、ピピ島。世界的に有名なビーチリゾートが並ぶタイの南部地域。多くの観光客がアンダマンの美しいビーチを楽しみにタイへやってくる。しかしタイは国土も大きく、地域によって話す言葉や宗教、文化や気候など違いも様々だ。南部は海に面している地域が多く、気候もより熱帯のそれに近づき、気温は高く湿度が高い。そしてマレーシアとの国境と接している地域にはイスラム教徒の割合が多くなり、言葉の訛りも強い。そういった違いというのはピッチの中にも影響してくる。

まずは気候の違いだ。高温多湿の気候で雨が多い。タイのどこに行っても日本では考えられないようなスコールは見られるが、南部地域では一年を通して雨が降る時間が長く、ピッチはぬかるみ芝もなかなか育たない。南部地域のチームで綺麗なピッチでプレーできることはまずないだろう。ぬかるんだピッチでいかに勝つために戦うか。必然的にロングボールが増え、フィジカルを重視するスタイルを採るチームが多くなる。

Image by Surathani City FC

そして宗教、文化の違い。スタジアムに足を運ぶとすぐに気づくだろう。髭をたくさんたくわえた男性やイスラム教特有の衣装を身にまとった女性達の姿が目に入るはずだ。もちろん彼らのほとんどはタイ人なのだが、他の地域とは少し違った異国のような空気感を感じる事ができる。またイスラム教のラマダンの時期になるとイスラム教徒の選手達は戒律に従い断食をすることになる。イスラム教の選手が多いチームなどは彼らのために練習がなくなったり、別メニューの練習になることもあるそうだ。

言葉の違いも意外に大きい。バンコクなどタイの他の地域では流暢にタイ人と会話できる程度の語学力があっても南部の訛りになかなか慣れられず、話している事が聞き取れない、そういった話はよく耳にする。

そして、南部地域は縦に長くそれぞれの地域も面積が広いため移動が長時間になるという問題もある。下部リーグではほとんどがバス移動になるが一番近い相手との試合でも2〜3時間、遠い場合には同じ南部地域の中でも10時間程かかる場合もある。そういった長距離の移動に慣れることも必要になってくるだろう。

休みの日には美しいビーチにすぐに出かけられる。そういった特典はあるかもしれない。しかしサッカーをプレーすると考えた場合にタフでなければそこではやっていけない。実際に南部のクラブではアフリカ系の選手が多く活躍している。彼らの身体的強さ、そして環境への適応能力はなかなか真似できない部分がある。同じタイの中だが少し他の地域とは違った特徴を持つ南部地域。ここで活躍するためにはピッチ内の能力だけではなく、ピッチ外での適応能力も大事になってくることは間違いない。

 

 

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